2017年9月25日月曜日

我谷盆ワークショップ


会場は、2月に曲げ木ガラス塗料のWSが開催された
台風18号の到来と重なってしまい、開催が危ぶまれていましたが、
私の参加した18日は朝からお天気で、
JR岐阜駅前には虹も出ていました。

ビルの手前右下に金色に見えるのは織田信長像です。

ここからバスと車で現地に向かいました。

会場の森の情報センターには、
受付開始時間前からほとんどの方が集まっていらっしゃいました。
参加申し込み受付開始たった数分で満席になったという熱意が伝わってきます。
(私も時報と同時にクリックしました)

講師は、京都在住で、山中温泉の工房にも通って制作をされている
森口信一さんです。

「我谷盆(わがたぼん)」とは、
かつて山中温泉の近くにあった
現在はダムに沈んでしまった我谷村(わがたにむら)で作られていた
栗の生木を使って作られていたお盆のことです。
お盆は「わがた」、地名は「わがたに」と読むそうです。
検索すると詳しい情報が出てきますので
ここでは制作工程だけをご紹介します。

受講生の制作用の板は既に準備してありましたが、
まずは、栗の生木の丸太を割って板にする方法を実演してくださいます。


くさびを打ち込むと、木目に沿ってきれいに割れます。

きれいに目の通った材です。

自己紹介の後で作業席につき、既に準備してあった板を選びます。

材の芯側になる面を上にして下書きをします。
まず、縁から1cm内側で線を引きます。
これが内側の完成時の基準になります。
ここから内側5mmに線を引きます。これが底の完成時の基準です。
つまり、この5mmが内側の傾斜の分です。
(この内側の線は外まで延ばしておきます。)
外側の線を基準に、四隅に直径4cmくらいの円の1/4を描きます。

そして、森口さんの実演です。
この作業台は森口さんが山中で使われているものをお持ちになられたそうですが、
我々の作業台にも同じ止め木がつけられていました。
実際の作業を進めると、この形状がとても使いやすいことがわかりました。

まずは四隅を丸鑿で3回(中、両脇の3つのノミ目になるよう)強めに叩き、
目印とします。

続いて、四隅の丸鑿の目印の間に平鑿を斜めに入れます。

長辺は割れやすいので、木口より弱めに叩きます。
(木口の1/3程度の力)

次に、短辺の端を、真ん中から端に向かって丸鑿で彫ります。

次は、少し間を離して同様に彫ります。

板を反対に回して、反対側も同様に彫ります。

その間を平鑿で落としていきます。確かにこれは早い!

一段彫ったら、また四隅を叩くところから始めます。
四隅を丸鑿であらかじめ切っておくことで
木の割れを防ぐことができるのですが、
それでもちょっと力を入れすぎると割れがおきます。

この作業を繰り返し、底が適度な厚み(8mmくらい)まで彫り進めたら、
丸鑿の模様彫りを入れる作業になります。
底の厚みはトンボで計測しました。

まずは森口さん曰く、「トップシークレット」の技。
まず、平鑿で底の内側周囲の繊維を断ち切る作業からです。
いわゆる隠し包丁。
これを入れておくことで、丸鑿の屑がきれいに取れるのです。

そして、模様のノミ目は、ゴムハンマーで叩いて彫り進めます。
これも真ん中から外に向かって彫り、真ん中でノミ目をつなげます。
この作業の前までに使っていた木槌とゴムハンマーとでは
全く感触が異なることにびっくりです。

底部分のノミ目が入れられたら、次は縁のノミ目です。

ここも平鑿の「トップシークレット」加工が重要です。
長辺は割れやすいので、力の加減もポイントです。

長辺も同様に彫り進めます。
底のノミ目とつながるようにするのがポイント。

角の始末はこんな感じになっています。

とにかく1日で仕上げねばならないので、
ここからは写真を撮影している余裕もなく作業を続けました。

ノミ目まで完成したら、センを使って周囲を約15°斜めに落とし、
4つの角を平鑿で3回(中心、両脇)で落とし、
カンナで裏側を削り、鋭角部分を落としたら形は完成です。


底は木目に直角に削ります。
そのため、ハマグリ刃のカンナを使いました。
これは模様の他、摩擦を減らす畳ずれの役割になるんですね。

完成したお皿には、独特の方法で着色を施します。

まずは、木灰で作った灰汁の中に約10分浸し、
灰の粉と余分な水を拭き取ったら、
そこに、この褐色の液を塗り、乾いたらサンドペーパーで表面のざらざらをとり、
さらにシュロのたわしでこすって磨いたら完成です。

褐色の液は、栗の木の削りかすと鉄を煮て作るそうです。
栗の木に含まれるタンニンを利用している、これは一種のお歯黒ですね。

自分の作ったお盆はこんな感じに仕上がりました。
しかし、もうちょっと色を加えたいと思ったので、
自宅で栗のお歯黒液を作りました。

ちょうどご近所の方から栗のイガをもらっていました。
どこかの染色の本に、栗のイガが一番良く染まると書いてあったからです。


鉄釘を入れると、液はすぐに黒くなりました。

これを濾して、再度灰汁に浸した盆に塗りました。

乾いてから磨いてこんな感じです。
完成したら漆を塗ろうかと思っていましたが、
これはこの風合いが良いんじゃないかという気になってきたので
このまま使うことにします。

こうやって写真で見ると、直したくなるところがいろいろ出て来ます。
しかし、素朴さが売りの一つである庶民のお盆ですから、
ここはじっと我慢。
栗の生木が手に入ったら是非もう一度やってみたいです。

2017年9月23日土曜日

漆の木倒れる

今年は度々の台風の影響もなどで強風の日が多く、
しかし、夏の間は雨が少なかったため、
背丈がかなり伸びた漆の木の根元の地面にはヒビが入り、
根が浮きあがっている場所もありました。


頭が重くなりすぎているのが原因だろうと、
父が枝の一部を剪定したのですが、
本日、ついに一本が倒れてしまいました。

隣のミカンの木を直撃していたので、
まずはコーラのケースで幹を浮かせました。

さすが、粘りのあるミカンの木の枝は、
幸いヒビが入っただけで、折れるまでには至っていませんでした。
今夏は、2本のミカンの木のうち一本が突然枯死してしまったこともあり、
お正月の鏡餅の上に置く分のミカンはなんとかなりそうでやれやれです。

こんな背の高い漆の木なのに、
根はたったこれだけでした。
先日までの強風で既に細い部分が切れてしまっていたようです。
漆やハゼノキの根は、下に伸びずに横に走ります。
こんなに太い根なのに、真下に伸びているものはありません。
漆の木は鉢植えで育てられないというのと、
横風に弱い、というのはこれが理由です。

これをそのまま埋め戻しても無理なので、
残念ですが、根元から切りました。
漆を一度も掻いていないため、漆液が出てきてヌルヌルして
のこぎりが滑ってなかなか切れません。
2010年に1年生の苗を頂いて植えたものですから、
今年で8年目になります。

初夏から漆を掻いた木を切り倒すのとは違い、
一度も掻いたことのない木ですから。
幹もずっしりと重い感じがします。

幹を倒した時の傷から漆液は出ていますが、
残念ながら集められるほどの量はありませんでした。


しかし、切り口からはどんどん漆が吹き出します。


切った幹の方からもです。


時期的には既に遅辺(おそへん)ですから、
大変粘りが強い漆です。
乾きも遅いはずですが、
何かに使えないか試してみます。

2017年9月12日火曜日

くらしの植物苑

成田空港の手前、
千葉県佐倉市の佐倉城址公園には国立歴史民俗博物館があります。
博物館の正面玄関から左手方向にある姥が池まで坂を下り、
くらしの植物苑」という小さな植物園があります。

お城のあった頃から生えている大木もそのまま利用されています。

ここは博物館とは別料金100円ですが、
JAFの会員証で入場料は無料になります。(※時期など要確認)


残念ながらこの日到着したのは夕方で花はほとんど見られませんでしたが、
1990年代後半より始まった朝顔展の時期はたくさんの方が来場するそうです。

ここにはたくさんの有用植物が植えられています。
こういった植物園で実際の木や植物を見ておけば、
野山を散策した時、有用植物をみつけるのに役立ちます。
たとえばこの巨木は、

胃腸薬になるキハダ (Phellodendron amurense).
ミカン科。染め物にも使います。


これはハゼノキ(Toxicodendron succedaneum)。
熟した実を蒸して鑞を絞ります。

トロロアオイ(Abelmoschus manihot)
根は和紙を漉く時のネリに使われます。

白ワタ(Gossypium arboreum)。
うちの綿の木はまだつぼみもついていないのですが、さすが千葉。

ジュート(黄麻)の原料、ツナソ(Corchorus capsularis)

亜麻(Linum usitatissimum)
リネンの材料。さすがにここでは育ちはいまひとつですね。

タデアイ(Persicaria tinctoria)。育ちがいいです。


大帽子花(Commelina communis var. hortensis)
馴染みのない名前ですが、別名は青花。ツユクサの栽培変種で
新鮮な青い花から友禅の下書きに使う青花紙の青い色素を絞りとります。
残念ながらシーズン終わりの夕方だったので花もしぼんでいます。

まだ若いですが、ウルシノキ(Toxicodendron vernicifluum)もあります。
かぶれに注意!

縄文時代式の漆掻きを実験した傷跡のようです。

そして大量の蝉の抜け殻が葉っぱの裏に。
やはり蝉はウルシノキが好きな様子。


ムクノキ(Aphananthe aspera)
葉は天然のサンドペーパーとして木地師に使われてきました。

ヤシャブシ(Alnus firma)。実を染色に使います。

カマツカ(Pourthiaea villosa)
鎌などの柄にした、粘りがあり折れにくい木です。

コリヤナギ(Salix koriyanagi)。柳行李や弁当箱が作られます。


サワフタギ(Symplocos sawafutagi。別名ルリミノウシコロシ、ニシゴリ。
ハイノキ科の木で、灰をムラサキの染色に使います。

ミツマタ(Edgeworthia chrysantha
日本の紙幣はミツマタ紙でできています。

看板は出ていませんが、コウゾ
Broussonetia kazinoki x Broussonetia papyrifera

ひょうたんやヘチマもあります。

歴博は常設展示場も広く、全部を見るにも時間がかかってしまいますので、
博物館より先にこちらを見てから、
ここか城址公園内でお弁当を食べるというのも気持ちよいと思います。

歴博までは東京駅からの直行バスを含め(一日一往復)
京成佐倉駅JR佐倉駅から正面玄関までのバスが発着しています。