2016年6月17日金曜日

東ブータンの織り:Mongar郊外

モンガル郊外の、今年の春から3年ぶりにラック養殖を再開したという
農家の宅でお昼をいただきました。

ここにも手作りの織り用の道具がありました。
身近に手に入るもので工夫して作られています。
日本人がこういうことをしなくなってしまったのはいつ頃からでしょうか?
これなら自分も作れそう。

台所の方にはやはり腰機がありました。


腰帯の使い込まれた様子が美しいです。

ここのお宅ではまだ昔ながらの竹筒に横糸を入れていました。
これもかなり使い込まれてますよね。

こんなのも織っている、と見せてくださったのが
このとっておきのキラ。

驚きの細密織りです。
染織の調査に来ているのでないのが残念無念。

一体どんな方が着られるんでしょうね。

この秋以降はご主人が養殖されたラックで染めた糸を使い、
キラが織られるとしたら素敵だなと思いました。

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この調査はサントリー文化財団の助成で行われました。


東ブータンの織り:Rangjung

特に東ブータンでは普通のお宅にも織機が置かれ、
奥さんや娘さんが布を織って副収入にしたり、
さらにはそれで生計を立てている人もおられます。
同行してくださったAさんのご親戚の一件の
RangjungのNさんのところは後者のようです。

お嬢さんが腰機で織りをしています。

機にかけられる前の糸も並んでいます。
家の中にはたくさんの布が。

Aさんの訪問も久しぶりということもあり、
さっそく貴重な布を見せてくださいます。
まずはものすごく手の込んだ織りのハーフキラから。




表にはこれだけ色があるのですが、裏面は

縞模様以外の色糸がほとんど見えません。
これが片面縫取り織りという技法です。
キラ(女性服)一枚分織るのにどれだけ時間がかかるんでしょう?

さらに、金糸の入った豪華なハーフキラも出してきてくださいました。
使い方次第では下品になるピンク色ですが、

金糸も入っているのに上品です。
実はこれ、現女王の結婚式に着られたキラの複製?だそうです。
ちなみに金糸は京都の西陣から特別に取り寄せたのだとか。

西陣織用の金糸の中でも細いものが使われています。

これらのハーフキラ、お値段は日本円で10万前後というのですから、
考え方によっては超お買い得!

これなんか、日本の着物の帯になるわよ〜
と、Nさんが着用。
う〜ん、どんな着物に合わせられるのかわかりません。

これは東ブータン独特の模様、メンタ。
新しいものは化学染料が使われているとは言え、
さすが落ち着いた色合いです。

古いブラのゴーもありました。(男性用の上衣)
間違いなくラック染めです。

いつも謎なのはこのピンク。何で染めたらこの色が出るのか。

Nさんのところでも近年ラックは値上がりがひどく
入手が難しくなっているので、
茜とインドの化学染料でなんとかラックの色を出そうと工夫しているそうです。
かつては近隣の人の分まで数十キロをまとめ買いしていたとのことで、
つまり、織られた布を観光客を含めた人に売るだけでなく、
素材を地元の人に売ってもいるわけです。
面白いですね。

しかし、ここでも改めてブータンのラック不足の深刻さがわかりました。
茜と合成染料で果たしてどこまでラックの色に近づけられるのか、
それとも既にあちこちでそれを見ているのに、気づかないだけかもしれません。


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この調査はサントリー文化財団の助成で行われました。

東ブータンの織り1:Radi

今回泊まったゲストハウスの奥さんのPさんは
染めだけでなく織りもされます。

ブータンで多く見かけるのは腰機です。
腰にあてたベルトで縦糸を引っ張りながら織るので、
かなりの力が必要になります。

そのために、両足をフレームの下の横棒に当てて
足と腰で糸の張りを調整しながら織るわけです。
織る布の長さを壁側の柱の穴で調整した後、
柱をつなぐ横棒にさらに角材を当てて、
それぞれの織り子さんの身長にあわせて足の位置も調整できます。

打ち棒は堅木で作られています。


ラック色も含めた縦糸を規則通りに掬い、細かい模様を織ってます。
(なぜか織られた部分の写真を撮っていませんでした・・・)





横糸は切れないように、水で湿らせながら織ります。
手にしている黄色い棒の中に横糸を入れています。

中はこんな感じ。

で、これは何かというと、水道などに使う塩ビパイプの先を
熱で溶かして塞いで尖らせたものだそうです。
このあたりの方はみなさんこの道具を使っているそうです。
最初に考えたのは誰なんでしょうね?


そして、このブラシみたいな道具で頻繁に縦糸も濡らしています。
すっかり色が染まってなんだかわかりませんでしたが、
なんとこれ、トウモロコシの芯の先端だそうです!
なんと素晴らしいアイディア!

そして、他国でも見たことがある、
自転車?の車輪を使った糸車。

その他の道具、
糸目を揃える櫛

糸の滑りをよくするロウ。ミツロウらしいです。

さて、この切り落とされた端糸はどうなるかというと、

結んでつないで、

ある程度の長さになったら、

二本をあわせて紡いで、

色の混じった糸にして、

これを使ってスカーフなどを作るそうです。
民族模様でない分、普通の洋服にも合うし、なかなかいいアイディアだと思いました。

別のお宅でもこの糸を使って織られた布を見ました。
いろいろ工夫されています。

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この調査はサントリー文化財団の助成で行われました。

東ブータンの染色4:ウコン

最後はウコンです。
これが染めに使うウコンだそうです。
これも根っこは食べられなくはないそうですが、
カレーに使うのは別の種類だそうです。

シンシャバの煮汁を濾します。

それを火にかけて煮ます。

そこにウコンの粉末を加えます。

グラグラ煮て、そこに染める糸や布を入れます。

火からおろして色を見ます。

ウコンは粉末なので、布にはたくさん粉がついています。

これに関しては乾かす前に一度水洗いします。

アカネも乾いたら水洗いします。
ちなみに、ここの水はpH6と7の間くらいでした。

黄色、赤、青、
ここにラック色が入ると、まさにブータンの色だなあと思います。

青空の下ですぐに乾きそうに思えるのですが、
山に囲まれた場所のため日没が早く、
同時に干していた我々の洗濯物は一部乾きませんでした。

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この調査はサントリー文化財団の助成で行われました。