2016年2月22日月曜日

インド調査2016(8) Rogan art


Nirona村のバス停から少し先の壁にこんな文字が。
その文字の正面にある路地を入るとすぐにRogan Artの看板がありました。
でもガイドのDさん、ここじゃない、とさらに路地を進みます。
数件先の右手の木の扉の奥が元祖、Rogan Artの工房でした。

この工房のSumar D Khatriさんです。

さっそくRogan Artについてご説明くださいます。
このスライムのような塊がRogan Artの材料、
ここまでの道中でうんざりする程見たヒマの油、蓖麻子油を3−4時間煮詰め、
3日ほど置いてゼリー状にしたものだそうです。
ここに鉱物系顔料を1:1の割合で加え混ぜたものを使うのですが、
使う色は白、赤、黄、緑、黒、青のみだとのこと。
この絵具を純水の中に入れて保存し、
この鉄の棒1本だけを使って模様を描くそうです。

説明も慣れた様子で、さっそく実演してくれました。
まずは、少量のRoganを取ります。

それを掌の端で均質になるまで練ります。
そして、鉄の棒を使って線描きしていきます。

線描きが終わったら、それを半分に折り、対称の模様を作っていきます。

このような方法で、彼らの代表作「生命の木」もできあがるそうです。
この描画は洗っても落ちないそうです。

この技法は3世紀以上もの間、同じ場所で同じ家族により伝えられてきたとのこと。

この生命の木シリーズは、Sumarさんのお兄さんが始めたそうで、
近年、インドを代表するお土産としてオバマ大統領にも贈られたと、
その新聞記事も誇らしげに飾ってありました。
現物も何枚か見せていただきましたが、
著作権があるから写真撮影はダメとのこと。
なので、ここでも印刷物だけです。

ところで、お兄さんが編み出したこの「生命の木」以前はどうなのか?
というと、ちゃんと古い作品も展示してありました。


いやこれ、同じ材料を使っているというだけで、全く別物ですよ。
個人的にこっちの方が圧倒的に好きですが、
さすがに古いものも高くて買えません。

しかし、古いRogan Artの品を現代風のバッグに仕立てたものがあり、
(デザインはいま一つですが)値段が意外に手頃だったので、それと、
やはり比較見本のために、生命の木を描いた小さい布を入手しました。

お金を払い、ちょっとお手洗いに行っている間に袋に入れておいてもらったのですが、
ここまで細かく神経質に繊細な作品を描いているのとは違い、
買った生命の木の布は適当に4つ折り(!)にされていた上、
後からバッグを2つ入れたらしく、袋の底でしわしわになっていました。(涙)
う〜ん、安いものじゃないんだから、最後まで気を遣って欲しかったです。
アイロンかけてもいいんだろうか?

帰りにはラクダが活躍してました。


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この調査は科研費の助成により行われました。

インド調査2016(7) Nironaのラックの轆轤塗装品

Bhuj2日目、今度は北のNirona村に向かいます。
パキスタンの国境に近く、途中、インド軍の施設があるおかげで、
ここはいつも道路が大変きれいに整備されているのだそうです。

窓の外は両側とも同じ植物が延々と続きます。
葉っぱの感じから綿?と聞いたら、いや、これは蓖麻(ひま)だと。
「ひまし油」の蓖麻です。
こんなにたくさん何に使うの?と聞くと、やはり薬にするんだという話。
せっかくだから降りて見ようということになりました。

蓖麻の全体です。結構大きいです。

花。

まだ実は熟していないので、潰しても油は出ませんでした。

「そうそう、昨日の絨毯屋が言ってた赤い実の木がここにあるよ」
とDさんが言うので、見たら、なんだ、インドナツメではないですか。
野生のラックがついていないか探しましたが、
残念ながらここにはいませんでした。

さて、2時間くらいでNirona到着。
この村は過去には狩猟などで自給自足をしていた地域だったけれど、
政府関係者の指導のもと、
地元でとれる材料を使った工芸品の制作が行われるようになったのだそうです。
なので、ここでのラック工芸も歴史はたかだか60年くらいのものだとか。

観光客に見せるために、家の前に道具が設置されています。

弓旋盤です。
構造はシンプルなものですが、
実際作るとなればそれなりの調整が必要でしょう。








天然顔料を混ぜて棒状に固めたラックを摩擦熱で溶かして塗装するという方法です。
ラックは以前はインドナツメについた天然ラックを使っていましたが、
天然ものはゴミが多いから、今は町で買うバトンラックも使っているそうです。
1年に1回しか作らないからということで、やはり製造工程は見られませんでした。

弓旋盤で削ったスプーンに、棒状に固めたラックを押しつけ摩擦熱で溶かし、
さらに別の色のラックが塗られた棒を押しつけて模様を付け、
ヤシの幹で作った棒を押しつけて平らにならし、
その上をピーナツ油をつけた布で拭いて磨く、という工程です。

この弓旋盤を使わせてもらいましたが、
右手で弓を引いて、左手で刃物や道具を操るというのは
なかなか慣れないと難しい作業です。

職人さんは必要に応じて両足も駆使しています。

材は近くで採れるアカシア。
マメ科の木なので堅くて丈夫です。




ノコの目立て方がちょっと面白い。

アサリはあまりないようですが。

驚いたのは、デモンストレーションが終わると
周囲にいた女性が一斉に店開きすることです。

一瞬にして商品が目の前に並びます。
慣れてますね〜

料理用スプーン、ターナー、そしてチャパティローラーです。

他に白人の観光客がおられたので、
買い物はそちらにお任せして、こちらはさらに道具観察。
刃物を研ぐ砥石

使う刃物もたった数本だけです。

細いのと
広いの。
道具箱。
左手の竹のように見えるのがヤシの幹です。

作品写真集も見せてもらいました。

このおじいちゃんが11歳の時から始まり、
現在70歳なので、それだけの歴史だとのこと。
昔はスプーン一本50パイサ(1ルピーの半分)で売ってた、と笑ってました。
現在一本が400ルピーです。

同じ村にある「ローガン・アート」というのが有名で、
次々に見に来る白人さん達も先にそれを見てからこちらに来たから
ローガン・アートも是非見るべき、と言われ、
お客さんがいる間にそちらへ移動することと致しました。


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この調査は科研費の助成により行われました。

インド調査2016(6) 絨毯工房

Ajrakh工房で予定以上に時間を費やしたため、
この後どこに行くべきかをSufiyanさんにも相談し、
その結果、近くのKukma村の絨毯職人
Tejsi & Samat Danaさん親子の工房に行くことになりました。

残念ながらお父さんはアーメダバードでの展覧会でお留守とのこと。
英語はあまり達者でないということで、
ガイドのDさんに訳してもらいます。

これは一人用の織機。
この工房では、羊とらくだの毛を天然染料で染めた糸で
全ての製品を作っているそうです。

こちらは2人用の織機。
両端から2人で織っていくそうです。
この糸はラクダと黒い羊の毛で、両方全く染めていないそうです。

染めた糸が干してありました。

ラック染めの糸です。
昨日染めたばかりだから今日は染めないよって、残念!
交渉しましたが、これは買うことができませんでした。
媒染材など一切使わず、ラックだけで染まるというのがさすがウールです。

ラックは赤い実の付く「ベリー」という木から取るほか
地元で買っているそうですが、
ここでもやはり入手できるところを教えてくれとの依頼が(苦笑)

お父さんは天才肌の方で、
何の下描きもなく様々な牧歌的なパターンを織り上げてしまうそうで、
アメリカやヨーロッパからも顧客が来るそうです。
しかし作品は「著作権があるから」と撮影禁止、
その代わり、以前海外の方が出版したという図録を見せてくれました。
図録の写真はいいんですね(笑)。

手前の小さいのはバッグだそうです。
模様はサソリやラクダや、地元の生物だそうですが、
サソリ、やっぱりいるんですね。。。

Modi首相から賞をもらったという賞状と写真を自慢げに見せてくれました。

天井には糸車が。
ここは家族だけで運営している工房で、女性は家で糸を引いたり糸切りしたりの他、
染めの時は家族総出で行うそうです。

前日、染めをやったという形跡がありました。
ああ残念。


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この調査は科研費の助成により行われました。