2015年7月21日火曜日

家にあったメンガ

先日、蓮を見に行ったお寺で見せていただいたお念珠の中で、
ひときわ異彩を放っていた緬茄(めんか)菩提樹のお念珠。

お釈迦様がその下で悟りを開いたという菩提樹とは違う種類と言われたので、
家に戻ってからさっそくGoogleで検索をしてみました。


うわ、この鞘見たことある!
うちにあるやつと同じだ!
これは、ラオスのルアンプラバンの夜市を歩いていた時、
面白い形の木の実を持ったおばちゃんがいて、
売り物じゃなかったらしいけれど、無理に値段をつけてもらい譲ってもらったもので、
名前も何もわからずにいました。
外に出しておいても梅雨や台風時期には表面にカビが生えるので、
気がついたら表面を拭くようにしていたのですが、
ご覧のように既に一つは虫が喰ってます。

手に持つとこんな感じです。
財布みたいな形状というのがおわかりになるでしょうか?
割って中身を見てみようかと手に取ったものの、
鞘のこの凸凹がどういうわけか私の手の指にぴったりサイズで、
どうしても割ることができません。

この話を先日ブータン調査に同行してくれたOさんにメールしたところ、
オーストラリアのお土産でもらったメンガがあるから、
なんと、割って中身を送ってくれるという話に。
緬茄、Afzelia xylocarpa、「メンガ」って言うんですね。

そして、本日無事に到着しました。

上は、うちにある鞘、下が送ってもらったメンガの種です。
6つ入っていたうち、一個は自分用にとっておきたいとのことで
なんと5個も送ってくれました。

帽子みたいな部分は取れるんですね。(郵送中に外れたようです)
真ん中に筋が入っていて、昔あったコーヒー豆を真似たチョコ菓子そっくりです。
「お数珠作るなら」と送ってもらったものの、
あまりに可愛く、もったいなくて穴が開けられません。

緬茄の種は中国では不老長寿や幸運をもたらす、という伝説があるそうです。
知らないうちに持っていた上に、追加が届いたことで、
どうぞ追加の幸せがやって来ますように。

2015年7月15日水曜日

鹿皮作業中

鹿皮の方も腐らないうちに処理中です。
湿った状態はこんな感じです。
皮には色のついた部分とそうでない部分があるほか、
ほくろとかもあるんですよ。
毛は皮が変化したもの、というのも納得する構造です。

いろいろ文献などを調べながら実験中。
塩漬けには米糠も使い、
石灰と灰汁のアルカリの中和には、
酢漬けにしていた自宅の梅の種だけを水で煮出した液を利用しました。
pHは3と、かなりの酸度です。
果肉は梅ジャムになりました。
去年は、この種を染色用の鉄媒染液(お歯黒)作りに使いました。
梅、種まで有効利用できます!

乾燥させていくと
どんどん透明になってきます。
これを生皮(きがわ)と言いますが、
鞣しをしたいので、この後は油で揉む作業になります。
台風が来ないうちに乾燥させないと
カビが生えそうなので急いでいます。

生皮で保存したい場合は、枠にぴんと貼って均一にしますが、
鞣すには皺があってもいいかなということでこのまま干しています。
さて、どうなりますか。

2015年7月13日月曜日

組み立て中の山鉾

土曜日に用事で京都に出かけたら、着物を着た人や外国人で一杯でした。
そう言えば、もう祇園祭の季節なんですね。
せっかくなので、京都に新しくできた東急ハンズを見に行ってから
組み立て中の山鉾を少し見て帰りました。

 東急ハンズの目の前にあったのが長刀鉾です。
組み立てているところを見るのは初めてなので、興味津々。

大勢人が見ている中、淡々と作業が進められている様子です。

大量の縄が必要なんですね。

しかし、さすがにここは四条河原町の繁華街のアーケード、
立ち止まって見続けるのはちょっと迷惑そうなので、
同じ通りにある函谷鉾へ。

こちらはアーケードがない分見やすいです。

 こちらも縄で縛っているところです。






屋根の下の絵がなかなか素晴らしいです。 

保存状態も良いですね。
祭りが始まってしまったらなかなかじっくり見られないんでしょうね。
一度、絨毯も間近で見てみたいなと思いつつ、
テレビで人混みを見るだけで、どうも腰が引けてしまいます。

2015年7月10日金曜日

皮の加工

お念珠作りも途中まで、というところで、
実は、春にちょっと話が出ていたものの、暫く忙しくて延期にしていた、
冬に地元で駆除された鹿の皮の加工作業を始めなければならなくなってしまいました。

神社の裏山にいる野生の鹿は、ここ数年住宅地の畑にまで入ってきており、
うちも近所の畑も柵を作って防御しています。
しかし、どんどん出没範囲も広がり、
一定の時期に猟友会が鹿や熊の駆除が行われています。

じゃあ、捕った鹿の角や皮はどうしてるんだろう?
という疑問を持っていたら、
まさにその駆除をしているという猟友会の人が偶然登場。
肉は食べても皮は加工がめんどくさいのでほとんど放置されている、
角は、雄の鹿は雌5頭に対して一頭だから、
数が少ないからあまりないという話でしたが、
今度の捕獲シーズンになったら取っておいてあげる、と言って下さいました。
そうしたら、
またまた狩猟免許を持っている方から、
今、冷凍した生の毛皮があるから、
それでいっぺん実験してみる?
と言われ、それをやっと加工することになったわけです。

古い二層式洗濯機をとっておいたのが役に立ちました。
せっかくなので、地元の天然の素材でやろうと言ってはいたのですが、
この時期、気温が高いので腐っても困るため、
とりあえずは手っ取り早い石灰漬けでやってみました。
加工の途中の様子は結構グロテスクですから、
写真は最小限にします。

うまく血抜きがされ、既に大部分の肉と脂肪分を取ってあったとは言え、
鹿は皮が薄いこともあって、
残っていた肉などを取り除くのはかなり大変でしたが、
2年前にお邪魔した姫路の皮加工業者のOさんのアドバイスで
庖丁などでなく、ステンレスの定規を使ったところ
これがなかなか具合が良かったです。

せっかくのきれいな冬毛をなぜ残さないのかと言えば、
鹿の毛は他の動物と違い、ストローのような中空構造になっていて、
ポキポキ折れてしまいやすいので
取った方が良いと、これは近所の革工房の方のご意見。
だから保温力に優れているのですね。

2日石灰水につけ込んでおいても、すぐに毛が取れるところと
なかなか取れないところがあるだけでなく、
野生の動物ですから、
毛の中がに血を吸ったダニがあちこちにいたり、
予想していたより臭くはないとは言え、
神経の細い人には無理な作業でしょう。
鞣しには脳みそを使う方法もあるそうですが、
それはちょっと私にも無理です。

しかし、こんな作業など滅多に見られるものではないので、
父親も興味津々で手伝いに来たり、
近所の方も見に来たり。
2日かけて、なんだかんだでほとんど毛も取れたので、
これから塩漬け、鞣し工程に入ります。

加工された皮が高くなるのも当然だなと改めて感じるほか、
古代の人達が身にまとうための動物の皮は何を使って
どのように加工していたのだろうか?などなど
いろいろ考えさせられる面白い体験です。

2015年7月5日日曜日

お念珠あれこれ

あるお寺に蓮の花を見に行って来ました。
 生憎の雨天のため、せっかくの花も一部は寝てしまっていました。
蓮の花は開いてから4日で散るので、
前日までに咲いていた花が夜に降った強い雨にやられたのだそうです。

しかし、この日に咲いた花は大丈夫。
下の蕾が伸びるのに1日、明日には咲くそうです。

 蓮根を取る蓮と花を観賞する蓮は別の種類で、
蓮根の蓮は一株で花は10本くらいしか咲かないそうですが、
花の咲く種類は蓮根は細いけれど、実がたくさんつくので
茹でて食べられるそうです。
お寺にある飾りや絵と同じだなと感心。

今回初めて教えて頂いたのですが、
蓮の葉の中央はちょっと色が違いますね。


 その部分をつまんで剥がすと、穴が空いています。
これは、蓮根の穴と同じ数空いていて、
日が照って光合成をしはじめると、この穴から空気が出て来るのだそうです。
水があれば泡がぷくぷくと出るのだそうですが、
残念ながら雨天のこの日はそれは見られず。

茎を折ると、中空なのがよくわかります。


そして、茎を折ると糸が出てきます。
これが当麻寺天寿国繍帳を織った糸(藕糸)とも言われていますが、
こんなに細い糸を紡いで糸にして織り上げるというのは
考えただけでも気が遠くなる作業です。
もう少し簡単な、乾燥させた茎から糸を取る方法も去年のブログでご紹介しました。

ところでこのお寺のご住職は、様々な材料でお念珠作りをされておられ
そのコレクションを拝見致しました。
 次から次へと出て来るお念珠のごく一部です。
左上の3つは、コヨリを編んでカシュー塗料を塗ったものだそうです。

このナスみたいな実は緬茄菩提樹(メンカボダイジュ)という木の実で、
名前はボダイジュですがマメ科の木です。
中国では魔除けや長生きのお守りなのだそうです。

これはモダマ。マメ科の木の実です。

これはデイゴの種。これもマメ科です。

モモとウメの種をグラインダーで磨いたものだそうです。
奧に見えるのは鹿の角の中に沈香の木を埋めたもの。

いろいろなボダイジュの実と、それに彫刻を施したもの。
固い実にこんな細工をするって、どんな刃物なんでしょう。

「星月菩提樹」と言って、必ずひとつ大きな穴が空いているのが「月」
地になっているつぶつぶを星に見立てた名前だそうです。
お釈迦様がその下で悟りを開いたという菩提樹はさすがに種類も様々。

そしてこれが蓮の実のお念珠です。
お寺の蓮池の実で作るということですが、
穴を開けて紐を通すだけだと、中を虫が喰って大変なことになるため、
ご住職が考案された秘訣を教えて頂きました。(内緒)

そして、図々しくも蓮の実のお念珠作りにチャレンジ!
使えば使うほど手脂でいい艶が出るそうです。
今回、時間が短かったのでここまで加工してあるものを使わせて頂きましたが、
蓮の実の表面にはガラス質の膜があるため、
それが残っていると手で触っても艶が出ないから、
泥と一緒に擦ってそれを落とす必要があるそうです。

左の連なっているのがお念珠に加工したもの、
右のバラバラなのが加工前。
確かに右は曇った感じがします。

家に帰ってから、去年の秋に東京スピニングパーティーで入手した蓮の実と、
庭から掘ってあった砥の粉用の山の石を水の中で擦ってみましたが、
膜はなかなか固く、かなり大変な作業でした。
でも、手で摺り合わせて表面を磨くという作業から
既に念が入りそうです(笑)

そして、実に通した紐を編む方法も教えて頂きましたが、
なかなかこれもややこしく、
忘れないうちに蓮の実に穴を開けてお念珠を作りながら復習しようと思います。

こういった自然素材を使ったお念珠をいろいろ触ると、
個人的には、粒の形や大きさがまちまちの自然素材の方が、
きれいに加工されて丸くなったお念珠より触り心地が良い感じがしました。
最初のお念珠というのもきっと木の実だったのではないかなと
勝手に想像しています。

2015年7月3日金曜日

原種と栽培種

ブータン調査から帰国してから、なんだかんだでゆっくり庭に出られていません。

なかなか発芽しなかった藍もやっと育ってきました。
(左横は漆の木です)


既に虫がちょっとついているくらい蒸れているので、
間引いて、育った上の葉をとりあえず収穫、冷凍保存しました。
これは、種蒔き前に土に石灰と発酵牛糞を入れて土作りをした場所に蒔いたものです。
同じ時に蒔いた種も、環境が違うと
こんな弱々しいままです。
これは、何年も放置されている植木鉢の空いた部分に蒔いたものですが、
藍は雑草と違って、養分がなければ育たないということがよくわかります。

そして、残念ながら今年は綿の種は全滅でした。
手をかけないとダメなものはダメですね。

漆の木の方は、花が終わった後、葉がぐんぐん茂ってきています。

しかし、うちの場合は父親が横に伸びる枝を切ってしまうので、
残念ながら今のところ幹はあまり太くなっていません。

ちなみに、植物学的にはこの全体が一枚の葉で、
手で持っている部分は一枚の葉が複数に分かれたもので「小葉」と言います。
こんなに大きくても「小葉」です。
厚みもあり、ごわごわしていますが、ハゼの葉のような表面の艶はありません。

これは西ブータンのある地域の漆の木の葉です。
日本の漆と同じ種かどうかは専門家の意見を待たねばなりませんが、
葉は薄く平らで、小葉も小さいです。
生育環境は異なるとしても、
漆の採取量と質は葉の光合成の量に比例しますから、
日本の漆の木は、長い年月の間に人間が選抜種を交配し続けたものなのだろうなと、
今回、ブータンの山の中で、小葉の小さい漆の木をたくさん見て改めて思いました。
藍に関してもきっと同じで、
地域にごとにより多くの藍色が染まる種が残っているんでしょうね。