2014年11月30日日曜日

クチナシ染め

早いもので明日から師走です。
今年はとにかく怒濤のように過ぎ去ってしまいました。
気がつけば、庭のクチナシももうこんなに色づいています。

今年もたくさん実がついたので、
まずは去年の古い実を使って、エコバッグを染めてみました。

乾燥保存していたクチナシの実です。

刻んで水に浸すと、オレンジ色の色素が大量に出ます。
これは最初にお湯を入れたところをうっかり写真を撮り忘れていて
染液を別の容器に濾して移したところですが、
まだこれだけ色が出ます。

熱した染め液に灰汁で煮洗いしておいたエコバッグを浸します。 

 熱いうちに入れてかき混ぜながら加熱し、放冷します。

左は以前タマネギでグラデーションに染めたバッグ、
右が今回のクチナシです。
染め方が違うので、色の濃さは異なりますが、
比較してみると、タマネギの方が緑っぽいですね。

庭のクチナシの実がもう少し色づいたら、
生のクチナシでも染めてみようかなと思います。

2014年11月25日火曜日

藍の種の収穫

今月はとにかく行事や用事が続き、家に居られないことが多く、
庭も放置しっぱなしでしたが、
その間にも当然、冬はどんどん近づいています。

漆の木もすっかり坊主です。

既に来年の芽が形成されているのですが、

数本の木だけなぜか葉っぱがまだ残っています。

こんなに葉がしっかり残っていて、黄色くもなっていないのは何故でしょう???

漆の木の根元からどんどん新しいシュート(脇芽)が出て来ることについて
丹波の岡本さんに伺ったところ、
それは、本体が育つより子作りに忙しくなっている状態から、良いことじゃない、
とのご指摘を受けました。
まあ、真夏の成長期に枝や葉っぱを父親にむしられてしまうから
生命保存本能が働いていると言えば納得です。
来年からちょっと考えなければ、と思っていたところ、
先日、父が隣町で牛を飼っている方から乾燥牛糞を買ってきて、
さっそく畑にどんどん入れているところです。
来年の成長は期待できそうです。

 さて、藍の方もそろそろ種の収穫時期です。
環境の異なる3箇所にあった藍の現在の状況は、

 耕していない砂利が多く地盤の固いところに生えた藍は、
葉の色は薄く小さく、花は咲いたものの、種は熟している感じがありません。

父にユンボで踏み散らかされたところからどうにか芽を出し、
スイカ畑となった場所の中で肥料と水を十分もらった藍は、
たった3粒の種からぐんぐん育ち、
一度刈り取りをした後もこんなに広がりました。

ちょっと日陰になっている場所は、やはり成長はよくありません。

 日当たりの良い畑の藍がたった一株でこんなに育ったのに比べ、

日陰は1本の大きさがたったこれだけです。
肥料と日当たりの重要性を改めて感じました。

この後、刈り取り、種を収穫するために干して
暇をみつけて種だけを分ける作業をしていますが、
これがなかなか時間がかかるのです・・・
続きは後日。

2014年11月19日水曜日

うえるかむまつり2014

この週末はあちこちで工芸関係イベントが開催されていて、
身体が複数欲しいと思いました。
私が参加したのは、京都でも兵庫県との県境に位置する
丹波福知山、夜久野町でのNPO丹波漆主催の恒例「うえるかむまつり」です。
漆の木を「植える」と「welcome」を組み合わせた名前のこの行事、
NPO丹波漆が設立してから開始され、今年で3年目になります。

今年は、1日目に福知山市と協定を組んだ京都美術工芸大学の学生さん達による
漆植栽地での研修と、漆の手ぐろめ実験などについての発表、
そして、昨年4月から漆掻きに弟子入りした竹内耕祐君、
京都の漆店「佐藤喜代松商店」の4代目若社長、佐藤貴彦氏の、
若手を中心とした漆の未来についての話がありました。
京都の漆屋4軒の若旦那も4人揃っての参加で、
今、日本国内で漆に関しては京都が一番期待できそうに感じられました。

そして、丹波漆を使った漆作品展の方も、
今回も面白い作品がたくさん。
こちらの高山さんの作品、手前のスイッチを押すと・・・

このようにきれいに透けます。
これは丹波漆だけでできた薄い膜を使った照明器具です。
裏にはガラスも何もなく、漆単独の塗膜を作られました。
透かすと黄色っぽいのも丹波漆の特徴かなという皆さんの共通の感想です。

こちらの遠藤さんの作品は、丹後和紙を漆で貼り重ねて胎を作った「一閑張り」ですが、
下地から全て丹波漆を使われたとのこと。
トンボの加飾は螺鈿です。

和紙の独特のつや消し感が丹波漆によってよく現れています。

こちらの青木さんは、毎年全く違った雰囲気の作品を作られています。

瓢箪はもちろん、葉っぱもカタツムリの殻も本物。
竹筒は自分が丹波漆を掻く時に使った筒だとのこと。
木の葉はタイサンボクで、7回摺り漆を重ねてあるそうです。

やくの木と漆の館職員、小野田さんの作品は、
一見、陶器かと見まごうような白漆の皿です。
漆は本来の色が濃い茶色なので、
純白の顔料(チタン白)を混ぜてもこのようなクリーム色になります。

まだ完成してからそれほど時間が経過していないにも関わらず、
ここまで明るく仕上がっているのが丹波漆ならでは。

同じく、木と漆の館職員の藤井さんの作品は、
自然に落ちた漆の木の樹皮をそのまま用いたコーヒーカップソーサーセットです。
スプーンも漆の枝をそのまま使っているそうです。

他にもいろいろ作品が並んでいましたが、
全部を解説できずすみません。

翌日は大変良いお天気となり、
今年からの漆植栽地へ徒歩で移動です。
ぞろぞろと歩く漆植栽団。
虫取り網と虫かごまで持って、一体どこに行くのか(笑)

こちらが今年からの植栽地です。
既に石灰で植える場所の印まで付けられています。
クロボクと言われる火山灰土で、
夜久野町でも限られた一帯にしかないという、
柔らかく保水力もある理想的な土です。

NPO丹波漆の岡本さんと、岡山の小野さんによる漆苗植栽の手順説明です。

根の走る方向も重要だという説明。
植える場所の東西南北や風向きを意識します。

岡本さんの弟子の漆掻きの竹内君も指導に入り、
あっという間に無事に100本の苗が植わり、
作業後には岡本さんからつきたてのお餅を振る舞っていただきました。

 そして、やくの木と漆の館に戻り、
一部の漆マニアック(?)が集まり、
佐藤貴彦さんによる、漆屋の視点からの漆の保存保管についてのお話会。
漆の「出世」とも言われる発酵についてと、
漆の保管温度や場所、
どのような容器に入れておくのが一番良いか、
蓋をする紙やラップの品質についてなどマニアックな話から、
臭い漆と臭くない漆の存在、というわけで、
話の流れから、漆の匂いの嗅ぎ比べまで始まりました。
しかし結局結論が出ず(笑)
しかし、こういった普段からの疑問をみんなで話合い、
情報交換する機会は貴重だと思います。

2014年11月6日木曜日

古モスリンの利用方法

暫く前ですが、たまたま展覧会を見に行くために電車に乗っていたら
デパートの古着物市の広告が目に入ったので、
展示を見てから寄ってみました。

残念ながら自分は着物は着ない(着られない)のですが、
染みや痛みがあって着物として着るには少々難ありの場合、
安価で買えるだけでなく、
珍しい布に触れられたり、店主の蘊蓄を聞けることから、
知らない土地で古い着物店を見つけたら、
ちょっと覗いてみています。

今回も、ワゴンに積まれた500円〜のコーナーを探していたら
ビニール袋に入ったままのこれを発見。
ウール100%の本モスリンです。
モスリンはもともと平織りの薄地ウールの布のことですが、
市販品には木綿やアクリルのものもあるので、
ウールの場合「本モスリン」、木綿の場合「綿モスリン」と区別されます。

ラベルのデザインから判断して昭和40年代前半でしょうか?
当時、一反4,200円とすると、かなり高価な品です。

500円で売られていた理由は、ビニール袋の中で虫が喰っていたからでした。

これを何に使うのかと言えば、
漆の「胴摺り(どうずり)」に使うと効果的だと
学生時代に教えてもらっていたからです。

「胴摺り」とは、研ぎ炭で刷毛目などを研いで平滑にした漆の塗面を
砥の粉と植物油を布につけて擦って磨く工程です。
金属や車のコンパウンド磨きに相当します。
通常のウエスよりモスリンが適しているといわれた理由は、
羊の毛の表面のキューティクルが研磨効果を高めているからだと思います。
モスリンの布をちょっと揉んでみると、
キシキシした感じがするのがそれです。
モスリンが漆の表面にも傷をつけず研磨効果が高いなら、
他のものを磨くにも良さそうですね。
(着物好きの方には怒られてしまうかもしれませんが・・・)

モスリンは既に自分の学生時代でも入手が難しく、
先生には、おじいちゃん、おばあちゃんが着ていて虫が喰ってしまった
古着物を探せと言われていましたが
若造には品質表示ラベルもない着物がモスリンなのかかどうかなんて
先生の使っている布をちょっと触らせてもらったくらいでは到底区別なんかつかず、
残念ながら見つけることができず、普通のウエスなどを使ってました。

以前、ネットオークションで着物をよく買っていた友達に
モスリンが出たら買っておいて!と頼んでいたことがありましたが
意外に出物がなく、
ようやく妥当な価格で見つけたものは
新品の完品で磨き作業に使うのがしのびなく、ずっとそのままになっていました。
その点、この虫喰いの布は気兼ねなく使えそうなのですが、
残念ながらその後胴摺りをする必要のある作品がありません。

一度、本モスリンの触感を覚えたら、
その後はガラクタ市や古着屋で捨て値で売られていたりする、
傷んだウールの着物を探すのもよさそうです。

2014年11月5日水曜日

漆の葉

漆の葉が紅葉しないという話は先日も書きました。


 紅葉でなく黄葉です。

 漆やハゼの葉は「複葉」と言って、
葉軸から出ている複数の葉はもともと一枚の葉であり、
我々が普通「葉」と呼んでいる部分は
植物学的には「小葉(しょうよう)」と言います。
落葉時には葉軸から落ちることから納得できますね。
(つまり、落葉する部分全体が一枚の葉)

タイやミャンマーのGluta usitata
オスのSemecarpus reticulatusなどの南方漆の木の葉は
日本や中国の漆やハゼとは見た目が全然違うのですが、
元は巨大な一枚の葉が進化によって裂けて複数の葉になったということで
理解ができます。
ちなみにこれはラオスの漆の木、Semecarpus reticulatusです。
(2011年11月撮影)
この時期ラオスも朝夜の寒暖の差が激しいとは言え、
常緑っぽく見えますが、冬はどうなるんでしょう?


各地で漆の木を見ていると、
どうも幼木の葉の方が赤くなるようです。
紅葉した葉での草木染めをされる方もおられるようですが、
赤くなった漆の葉を探すのが大変だとおっしゃられていました。

ハゼで染めをされる方は、
紅葉した葉でなく、実のついていた軸を集めて使われるそうです。
漆の実の軸ではどうなるか、一度試してみたいです。

 地面に落ちていた漆の葉(小葉)です。

よく見ると、漆で光っているような部分があります。
幹だけでなく、葉っぱにも漆が流れている証拠ですね。