2013年6月8日土曜日

貼り木賊の作り方

庭の木賊がどんどん伸びています。



木賊は「砥草」と書くこともあるように、
表面がざらざらしていて、天然のサンドペーパーのように
木や竹の表面などを研ぐために昔から使われていました。
英語ではhorsetail plant, Dutch rush, scouring rushなどと言い、
学名はEquisetum hyemaleと、「馬」という意味のラテン語が含まれてます。

日本だけでなく、実は世界に数万種類もあるという、
ツクシ(スギナ)と同類の原始的な裸子植物で、
胞子と根で増えます。
これはイギリスに自生していた木賊の一種です。
スギナのように見えますが、表面ががさがさしています。
これだとhorstail plantという感じがします。


ヨーロッパの家具職人や楽器職人も現在でも使っていて、
例えば、前にご紹介したAndré Jacob Rouboの"L'Art du menuisier ebeniste." 
(1769-1774)の研磨道具の中にもちゃんと出ています。


木賊はヨーロッパでも専門店で販売されていますが、
もちろん野生のものを採取して使う人もいます。

さて、これをどう使うのか、皆様、意外にご存じないので、
漆のM先生より教えていただいた方法をご紹介致します。

木賊は秋から冬の成長が止まった頃に採取し、陰干ししておきます。

干す時はなるだけ広げて、すだれのように紐で一本一本が
均一に風にあたるように吊して干した方が良いです。
これは一昨年父親がそれを知らないで束ねて干してしまった束で、
一番使える部分が折れてしまうのと、中と外との乾燥状態が異なるので
あまり良くないやり方です。
また、直射日光に当てすぎるともろくなります。

長い木賊は、適当な節のところで折って水に漬けます。
この時、乾燥しすぎていると途中から折れるので
無理に折らないようにします。
 水がしみこんで来ると色が変わって来て、簡単に節のところから折れるようになります。
しかし、後でハサミで切るので、ここで無理に折らなくても構いません。
これくらいまで水を吸って戻れば理想的。

適度に湿って弾力が戻ったところで節の部分をハサミで切り落とします。
この時、けちらずになるだけまっすぐな部分だけにしてしまう方が
後の作業が楽です。

そして、縦方向に一カ所ハサミで切ります。
切るというより、裂くという感じで繊維に沿ってまっすぐ切ります。

切り開いたら、内側を表にして、中についている薄皮をこそげ取ります。
スプーンや、切り出しナイフの背を使うと楽です。

こんな感じで、薄皮と中の繊維部分をできるだけこそげ取ります。

残った部分はほとんど透明になります。
(これはもう少し緑色の部分を取ります)
このまま普通に乾かすと
こんなふうに 丸まってしまうので、

厚紙の間に挟んで上から重石をかけて適度に乾燥させます。
乾燥させすぎると割れやすいので注意。
丸まってしまっても、水に入れればまた戻ります。
乾燥したものを、適当な大きさに切った木片に
両面テープで貼り付けます。
(こういう時に文明の利器は便利ですが、
昔ながらのやり方にこだわる人は膠で貼り付けてください)
足りない部分は適宜木賊を継ぎ合わせて余分な部分をカット。
 左が完成品です。
これを「貼り木賊」(はりどくさ)と言います。

竹の棒に貼って「鮫木」にしてもいろいろ便利です。

こんな手間暇かかることやってられない!
という方は、料理屋さんで出る竹の割り箸や菜箸、
鉛筆やペンの軸のようなものに差し込んで使ったり、
さらには
このように節で折った木賊を束にして使うというお手軽な方法もあります。

木賊の利点は、サンドペーパーと比べて目詰まりにくいこと、
サンドペーパーのように研磨粉が出ないこと、
金継の場合、釉薬に傷をつけないで表面を研ぐことができる、
などいろいろあります。

気になる方は1度庭に植えてみて、秋に収穫してみてください。
丈夫な植物なので恐ろしく増えます。
うちでは増えすぎて、一部は畑の肥料になってしまっています(!!)

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