2013年5月13日月曜日

外も中も文化財

先日、山手線に乗っていたら、
上野の同潤会アパートの取り壊しのニュースがドア上のモニターに流れました。
噂には聞いていましたが、ああ、ついに来てしまったかという感じです。

ここの一階には「伊勢型紙技術保存研究会」の主宰、
小林ゑみ子さんがお住まいで、
昨年の4月に友達と型紙体験講座に行きました。

上野同潤会アパートの前を通りかかった時に
「伊勢型紙技術保存研究会」の看板が出ていて、以前から気になっており、
調べてみたら、電話で予約すれば500円で型紙彫りが体験できるというのと、
いつ壊されるかわからない同潤会アパートの中に入ってみたいという
不純な動機もありました。


さて、当日友人と待ち合わせて訪問です。
ご自宅の居間での体験講座です。
前年に癌の手術をされた小林さんは、
この数日前から体調が悪かったそうですが、
刀を持ってお話をはじめるととてもお元気。
驚いたことにこの時で86才だとか。
伊勢型紙の職人さんだったご主人と出会い、
40歳になってから自分も伊勢型紙をはじめられ、
この技術を将来に伝えたいとの思いで、お一人でこの講座をされているそうです。
(完全な個人運営で、どこからも補助金も出ていません。
また、鈴鹿市白子町の伊勢型紙技術保存会とは別です。)

毎年、有楽町の交通会館で会員の作品展も開催されているそうです。

初心者用に、いくつかの小さいパターンが用意されています。
これを暇をみては、別の紙にブラシを使って写し取りをされているとか。
かなりの種類があったのですが、小林さんのお話が面白くて
写真を撮っている余裕がほとんどありませんでした(笑)
 これが型紙彫り用の専用の刃物です。体験講座ではこれを借りて作業をします。
これを作っている職人さんも減っていて、右のもので5000円だそうです。


ご主人の彫られた型紙が何枚も壁に飾られていました。
こういう型紙は、絹糸で補強がされています。

これは江戸時代のもの。
あちらこちらに貴重な品があります。

棚に山と積まれた型紙を見せていただいていたら、中から凄いものが!
人間国宝だった故・南部芳松さんが彫られた型紙だそうです。
小林さんのご主人は南部さんと仲が良く、一緒に展覧会とかしていたのだそうです。

このすごさ、写真ではどうにもお伝えできません。

結局、型紙彫りよりも小林さんのお話と、
古い型紙をあれこれ見せていただいて、
ついでに病床の小林さんにお食事など買い物にも出ていたら
予定時間2-3時間を大きく超えて、夜7時くらいになってしまいました。(大汗)

小林さんは同じ建物内にもう一部屋借りて、
古い型紙を保存されているとのことでした。
同潤会アパートが壊されることとなって、どこに引っ越されたのか、
気になっています。

学生時代に染織の授業で、渋紙を彫ってそれを染めるという課題がありました。
若さ=バカさだった時代ですから、せっかくだから是非小紋を作ろうと
それらしき模様をデザインして、彫りはじめて1週間、
目を閉じると模様がまぶたの裏に浮かぶ程必死で渋紙を彫りました。
しかし、その苦労の割には模様のつながりがいま一つで、
染めてもガタガタのものしかできませんでした。

型彫りに使った専用の刀はその後もいろいろ重宝していていたものの、
鋭い刃先は何度も折れて、研ぐのにも苦労していたので、
研ぎのコツなんかも聞いてみようというつもりでした。

しかし、それよりも何よりも、
翌週も修学旅行生の体験講座を予定していると、病床でも講座を断らない
小林さんの伊勢型紙にかける情熱があまりに凄くて、
圧倒されてそれどころではありませんでした。

引っ越してもお元気でいてくださることを願っています。

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